先日参加した緩和医療の講演会で、経験ある看護師の方とお話ししていたときに、「そのひとらしく」を支援するとはなんなのだろう、自分自身の「自分らしい」あり方もよくわからないのに、という問いかけに考えさせられました。

外来でも、訪問診療でも、患者さんの「これまでの生き方」やさまざまな事柄に関する「自分の考え」を伺えることがあり、それが治療や療養の選択の重要な位置を占めますが、実際は訪問看護やヘルパーさん、ケアマネの方が丁寧に把握されていることが多いと感じます。アドバンス・ケア・プランニングAdvance Care Planing(ACP)が注目され、患者さんの”意思決定”が重要視されるなか、その「決定」のみに心奪われると、終末期にゆれる「決定」に右往左往することになっている状況も聞こえてきます。意思決定の土台となる患者さんの「これまでの生き方」やさまざまな事柄に関する「自分の考え」を、関わる医療・介護のチームでも共有し、目標を合わせておくことが必要で、いままで以上に分厚いthickな情報共有が求められていると感じます。

その看護師の方が指摘していたように、「(医療・介護専門職が)自分でもなにが自分らしいのかが、わからないのでは」という話は、はっとしました。そのひとらしさは、普段そのままでは考えることは非常に少なくて、あたらめて考える機会をもって、はじめて立ち現れるのでは、と。今後、患者さんやご家族にさりげなく踏み込んで聞いてみたいと思います。

せせらぎクリニック多摩川では、自宅で医療を受ける方の意志決定を支援し、大田区で往診・在宅医療・訪問診療を行っております。

参考:厚生労働省.自らが望む人生の最終段階における医療・ケア